日本での不動産購入について頂戴するご質問は、その大半が購入前のこと——予算、エリア、ローン、税金に集中します。しかし実際にご購入いただいた後、最初に手が止まりやすいのが「普段この物件は誰が管理するのか」という点です。
本記事では長期賃貸(一般的な月極賃貸)に絞ってご説明いたします。民泊や短期賃貸には触れません。長期賃貸は収益が安定し、法規制もシンプルで、海外にお住まいの方が最も選ばれる形だからです。
一、日本でいう「管理」には二種類ございます
混同されやすいのですが、分譲マンションには性質の異なる二つの「管理」がございます。ひとつは管理費・修繕積立金で、これは管理組合へお支払いいただくもの。共用部の清掃、エレベーター保守、大規模修繕などに充てられ、賃貸に出すかどうかとは無関係に、所有している限り発生いたします。
もうひとつが本記事の主題である賃貸管理です。その一戸をどう賃貸に出すかを管理会社へ委託するもので、募集・契約・集金・入居者対応・退去精算までが含まれます。こちらは賃料収入から差し引かれる費用で、管理費とは別のものでございます。
二、委託形態は主に二種類:集金代行とサブリース
ひとつめが集金代行でございます。賃料の回収、滞納督促、経理処理を委託する形で、入居者との賃貸借契約はオーナー様と直接。空室リスクはオーナー様が負われます。手数料は最も低く、賃料の3%程度が目安です。
実務上最も多いのは、その中間にあたる一般管理(管理委託)です。集金に加えて、入居者募集、クレーム対応、修繕手配、退去立会いといった実務も含まれ、相場は賃料の5%程度。海外の方が区分マンションを賃貸に出される場合、多くはこの形です。
みっつめがサブリース(一括借上げ)です。管理会社が物件を借り上げ、入居者へ転貸いたします。オーナー様から見た借主は管理会社ですので、空室であっても賃料が支払われる点が特徴です。その分手数料は高く、賃料の10〜20%程度が相場となります。
ただし「家賃保証」という言葉は慎重にお受け取りください。保証賃料が永久に固定されることは通常なく、定期的な賃料見直し条項が設けられているのが一般的です。近年トラブルも報告されており、法令上も契約前の書面説明が求められております。ご検討の際は条項を一つずつご確認ください。
委託形態別の管理手数料(月額賃料に対する目安)
※ 濃色は一般的な下限、淡色は上限までの幅を示しております。実際の料率は会社・物件・委託範囲により異なり、個別のご契約によります(2026年8月時点の整理)。
三、管理会社が実際に行う業務
一般管理の場合、募集広告の掲載、内見案内、入居審査、契約・更新手続き、毎月の集金と督促、入居者からの日常的なご相談(エアコンの故障、給湯器の不具合、近隣の騒音など)、修繕の手配と見積、退去時の立会いと原状回復の調整、そして毎月の収支報告書のご提出、といった範囲が一般的です。
海外にお住まいのオーナー様にとっての価値は、集金という作業そのものよりも、夜間に入居者から漏水のご連絡があったとき現地へ向かえる人がいる、という点にあると考えております。
四、管理会社には登録制度がございます
2021年施行の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)により、管理戸数200戸以上の事業者は国土交通省への登録が義務付けられております。登録業者には、管理受託契約締結前の重要事項説明、契約書面の交付、そして受領した賃料・敷金を自己の固有財産と分別して口座管理することなどが法令上求められます。
管理会社をお選びになる際は、「賃貸住宅管理業の登録はございますか」と一言ご確認いただくとよろしいかと存じます。200戸未満は義務ではございませんので、登録がないから不可というわけではございませんが、登録業者は行政の監督下にあり、分別管理が法的に担保されております。
五、海外オーナー様が特に注意すべき三点
第一に、賃料の受取口座です。多くの管理会社は日本国内の口座へのお振込みとなります。非居住者の方の口座開設は不可能ではございませんが条件が厳しく、ご購入の段階で確認しておかれることをお勧めいたします。
第二に、非居住者に対する賃料の源泉徴収です。国税庁の定めにより、借主が法人である場合、非居住者であるオーナー様へ賃料をお支払いする際に20.42%を源泉所得税として差し引き、残りの79.58%をお支払いすることとされております。差し引かれた分は翌月10日までに借主が税務署へ納付いたします。これは没収ではなく前払いであり、確定申告により精算が可能です。租税条約がある場合は軽減・免除される場合もございます。
見落とされやすい例外がございます。借主が個人で、ご本人またはご親族の居住用としてお借りになる場合は、源泉徴収は不要です。同じ物件でも、個人の方にお貸しするか法人の社宅としてお貸しするかで、手取り額が変わってまいります。
借主が法人の場合、オーナー様の手取り比率
※ 国税庁 No.2884 に基づき、借主が法人の場合でございます。借主が個人でご本人・ご親族の居住用の場合、源泉徴収は不要です。実際の税額および申告方法は税理士にご確認ください。
第三に、時差と言語です。日本の管理会社は日本語対応・日本時間での営業が基本です。修繕見積の妥当性、更新条件、退去時の原状回復費用の負担区分など、翻訳するだけでは足りず、日本の相場と慣行を踏まえた判断が必要になる場面がございます。
六、管理会社へ伺うとよいご質問
手数料の率より先に、次の点をご確認いただくと判断しやすくなります。このエリアでの管理戸数はどのくらいか。募集からご成約までの平均期間は。空室期間の広告料(AD)の負担は。いくらまでの修繕はご相談なく進めてよいか。退去時の原状回復の負担区分は。月次報告書の様式と提出時期は。解約の際の予告期間は。
手数料が1%違っても年間では数万円ですが、空室が二ヶ月延びる、あるいは原状回復で想定外の負担が生じる場合、影響はその何倍にもなります。安さだけでお決めにならないほうが、結果的に有利になることが多いと考えております。
七、おわりに
日本の長期賃貸は制度として成熟しており、入居者の質と契約の安定性は大きな利点です。重要なのは、ご購入前の段階で「購入後は誰がどう管理するのか」という線を引いておくこと——管理会社の選定、賃料の受取方法、税務の取扱いまで含めてです。
日本の収益物件をご検討中の方、あるいはすでにご所有で現在の管理体制にご不安がある方は、LINEよりお気軽にご相談ください。賃料相場や管理条件の確認、日本の管理会社との橋渡しもお手伝いいたします(融資の可否・借入割合は個別の審査によります。税額および申告方法は税理士に、契約・登記は宅地建物取引士・司法書士にご確認ください)。
出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」(管理業者の登録義務および業務規制)、国税庁 No.2880「非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」および No.2884(源泉徴収税率20.42%と個人の自己居住用の例外)。管理手数料の相場は2026年8月時点で各社が公開する情報の整理値であり、実際の料率は会社・地域・委託範囲により異なります。個別のご契約内容をご確認ください。
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