周周・日本の不動産LINEで相談する
← ホームに戻る

ホーム › ローン・税金

ローン・税金

日本の不動産、どう売るか——海外オーナーのための売却の流れ・費用・期間

執筆者:周周2026-09-04
f シェアThreadsでシェア𝕏 でポスト🔗 リンクをコピー

当サイトでは「買う」ための記事を五十本ほど書いてまいりましたが、「売る」ことを扱うのは今回が初めてです。ここ二年ほど、以前ご購入いただいたお客様から「そろそろ手放したい」というご相談を頂戴する機会が増えてまいりました。お子様のご卒業に伴うご帰国、住み替え、あるいは資金の組み替え——理由はさまざまです。

ご購入時と同じく、ご売却も分からないことだらけというお声をよく伺います。しかも売主側のほうが、実はつまずきやすい。買主はお支払いになれば済みますが、売主はご所有権をお渡しする側だからです。この記事では、海外にお住まいのオーナー様が日本の不動産を売却される際の流れ・費用・税金・期間を一通り整理いたします。

一、まずは「今売るか、貸すか」から

ご相談の際、私はいつも三つお伺いしています。その資金の使い道は決まっているか。現状のまま賃貸に出せる状態か。そして、ご所有期間は今年で 5 年を超えているか。

三つ目が最も現実的です。譲渡所得の税率は「譲渡した年の 1 月 1 日」時点の所有期間で判定され、短期と長期では倍近い差が生じます(第六節で詳述いたします)。境界に近い場合は、少しお待ちいただくほうが有利になることがございます。

貸すか売るかに正解はございません。東京の賃料はこの数年上昇傾向にございますが、オーナーとなれば修繕・退去・空室の対応が伴い、海外からとなれば管理会社も必要です。当社は売買・管理いずれもお引き受けしておりますので率直に申し上げますが、もう戻ってお住まいになるご予定がなく、管理の手間も避けたいということであれば、売却のほうが話は単純です。

二、売却の流れ

順序はおおむね決まっております。査定で売出価格を決め、媒介契約を締結して正式にご依頼いただき、レインズに登録して全国の同業者が閲覧できる状態にする。そのうえで内見を重ね、買主から買付申込書を頂戴し、条件がまとまれば売買契約・手付金の授受。最後に金融機関にて決済を行い、所有権移転・残代金の受領・お引渡しを一日で完了させます。

査定について少し補足いたします。日本では成約価格が国土交通省の不動産情報ライブラリで確認でき、同一マンション・同一間取りの直近成約も追えます。したがって価格設定は勘ではなく、比較事例とお客様がどれだけお待ちになれるかで決まります。相場より強気の設定も可能ですが、対価は時間です。長く滞留した物件は同業者から「何か事情があるのでは」と見られ、かえって売りにくくなります。

三、媒介契約は 3 種類。選択を誤ると長引きます

不動産会社にご売却を委託する契約を媒介契約と申します。一般・専任・専属専任の 3 種類があり、違いは「何社に頼めるか」だけではございません。レインズへの登録義務と、進捗をご報告する義務の有無こそが実務上の分かれ目です。

媒介契約 3 種類の違い

一般媒介
専任媒介
専属専任媒介
複数社への依頼
可能
1 社のみ
1 社のみ
自己発見取引
可能
可能
不可
レインズへの登録義務
なし
契約から 7 営業日以内
契約から 5 営業日以内
業務状況の報告義務
なし
2 週間に 1 回以上
1 週間に 1 回以上

※ 宅地建物取引業法およびレインズ(不動産流通機構)の媒介契約制度に基づきます。契約期間はいずれも 3 か月が上限です。

「複数社に頼んだほうが早く売れるのでは」とお考えになる方が多いのですが、実務では逆になりがちです。一般媒介にはレインズ登録義務も報告義務もなく、各社とも「徒労に終わるかもしれない」と考えるため、広告費も人員も抑えがちになります。結果として五社に預けたのに、五社とも本気で動いていないという状態が起こります。

私がお勧めしているのは専任媒介です。一社が責任をもって担当し、7 営業日以内に必ずレインズへ登録して全国の同業者に開示され、2 週間に 1 回はご報告が入ります。ご自身で買主を見つけて直接契約なさる権利も残ります。契約期間はいずれも 3 か月が上限ですので、ご納得いただけなければ他社へ切り替えることも可能です。

四、海外にお住まいの場合、三つの関門が加わります

ここが最もお手間の生じる部分です。しかも気づかれるのが引渡し直前になりがちですので、先にご確認ください。

第一に、印鑑証明書に代わる書類です。所有権移転登記には印鑑証明書が必要ですが、日本に住民票がなければ印鑑登録ができません。そこで現地の日本国大使館・領事館で「署名(サイン)証明」を取得し、これを印鑑証明書の代わりといたします。あわせて住民票の代わりとなる「在留証明」も必要です。いずれもご本人が在外公館へお出向きになる必要があり、予約状況によりお時間を要しますので、一か月程度は見込んでいただくのが安全です。

第二に、納税管理人の届出です。売却の翌年には日本で確定申告が必要となりますが、海外から直接の申告はできません。日本国内で納税管理人を選任し、税務署へ届出を行います。実務上は税理士へご委任いただくことが多く、日本在住のご親族を選任される場合もございます。ご売却を決められた段階で手配なさることをお勧めいたします。

第三に、買主による 10.21% の源泉徴収です。非居住者が日本の不動産を譲渡される場合、買主は譲渡対価の 10.21% を源泉徴収して納付する義務を負いますので、決済時にお手元に入るのは 89.79% となります。これは追加の課税ではなく前払いで、翌年の確定申告で精算されますが、資金繰りには実際に影響いたします。(買主が個人で、ご自身の居住用として取得し、かつ譲渡対価が 1 億円以下の場合は源泉徴収は不要です。)

五、売主側でご負担いただく費用

項目自体はさほど多くございません。

売買契約書に貼付する印紙税には軽減措置があり、1,000 万円超 5,000 万円以下は 1 万円、5,000 万円超 1 億円以下は 3 万円、1 億円超 5 億円以下は 6 万円です(軽減は 2027 年 3 月 31 日まで)。住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消登記が必要で、登録免許税は不動産 1 個につき 1,000 円(土地・建物は別個に計算)、これに司法書士報酬が加わります。繰上返済に伴う金融機関の手数料も、主要都市銀行でおおむね 1 万円程度が目安です。

仲介手数料の上限は、売買価格のうち 400 万円を超える部分について 3% + 6 万円に消費税を加えた額です。2024 年 7 月の宅建業法改正により、800 万円以下の物件については上限が 30 万円+消費税(税込 33 万円)となりましたが、媒介契約締結時の事前合意が要件であり、後から一方的に引き上げることはできません。そのほか、残置物の処分、補修、必要に応じた測量費などが状況に応じて生じます。

六、税金:分岐点は「所有期間 5 年」

譲渡益(売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた額)を譲渡所得と申します。税率は所有期間で決まります。

売却益にかかる税金は「所有期間 5 年」で大きく変わります

010203040所有期間 5 年以下(短期)39.63%所有期間 5 年超(長期)20.315%譲渡所得の税率(所得税+住民税+復興特別所得税)

※ 所得税法に基づく譲渡所得の税率。短期は 39.63%(所得税 30%+住民税 9%+復興特別所得税)、長期は 20.315%(所得税 15%+住民税 5%+復興特別所得税)です。判定は「譲渡した年の 1 月 1 日」時点の所有期間によりますので、実際の日数とは異なります。具体的な税額や特例の適用可否は税理士にご確認ください。

誤解の多い点を一つ。5 年は取得から譲渡までの実日数ではなく、譲渡した年の 1 月 1 日時点で判定いたします。たとえば 2021 年 6 月にご取得の物件を 2026 年 8 月にご売却の場合、実際には 5 年を超えていても、2026 年 1 月 1 日時点では 4 年半ですので短期扱いとなり、税率は 20.315% ではなく 39.63% となります。境界付近では、必ず事前に税理士へご確認ください。

また、かつてご自身がお住まいになっていた居住用財産であれば、「3,000 万円特別控除」の適用を受けられる可能性がございます。ただし、住まなくなった日から 3 年目の 12 月 31 日までの譲渡であること、買主が配偶者や直系血族でないこと、前年・前々年に同特例の適用を受けていないことなど要件が複数ございます。非居住者の適用可否も個別事情によりますので、確答は差し控え、税理士のご判断に委ねます。

なお、ご購入時の売買契約書・諸費用の領収書・リフォームの請求書は必ず保管なさってください。取得費を証明できない場合、税務上は売却価格の 5% を取得費とみなすこととなり、長くご所有の物件ほど不利になります。

七、期間の目安

ご決断から入金までは、おおむね 3〜6 か月とお考えください。資料の整理と査定に 1〜2 週間、媒介契約・売出しののち内見が始まりますが、この期間が最も読みにくく、相場どおりの価格設定であれば 1〜3 か月で買主が現れることが多く、強気の設定であれば長くなります。条件がまとまってから決済までは、買主のローン審査もあり、さらに 1〜2 か月を要します。

海外にお住まいの場合は、署名証明・在留証明の取得期間が前段に加わります。ご売却をお決めになった時点で在外公館のご予約をお取りいただくことを強くお勧めいたします。ここが引渡し日に最も影響しやすい工程です。

八、ご提案

ご購入はじっくりお選びいただけますが、ご売却は時間との勝負です。滞留が長引くほど価格交渉の余地は狭まってまいります。したがって成否を分けるのは最初の二週間——価格設定の精度、資料の準備、媒介契約の選択です。ここが整えば、後の工程は概して順調に進みます。

日本に物件をお持ちで査定をご希望の方、あるいは「今売るとどの程度か、税引後にいくら残るのか」を知りたいという段階の方も、LINE よりお気軽にご連絡ください。所在地・間取り・築年数・ご取得年をお知らせいただければ、同一物件・同一間取りの直近成約を調べ、現実的なレンジをご提示いたします。海外にお住まいの場合は、署名証明、納税管理人、送金までを含めて段取りを組ませていただきます。

ご購入側の流れは日本の不動産購入の流れを、売却時の税金の詳細は海外オーナーの売却時税金ガイドを、売却代金の海外送金については不動産売買における国際送金をあわせてご覧ください。(成約価格は市況および個別事情によります。具体的な税額と特例の適用可否は税理士に、契約および登記は司法書士・宅地建物取引士にご確認ください。)

出典:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」(軽減は 2027 年 3 月 31 日まで)、非居住者等への譲渡対価に係る源泉徴収(10.21%。買主が個人かつ自己の居住用で、対価 1 億円以下の場合は不要)、宅地建物取引業法における低廉な空家等の媒介特例(2024 年 7 月施行。800 万円以下は上限 30 万円+消費税、事前合意が要件)、レインズ(不動産流通機構)媒介契約制度(専任 7 営業日・専属専任 5 営業日以内の登録、報告頻度 2 週間・1 週間、契約期間の上限 3 か月)、所得税法における譲渡所得の税率(短期 39.63%・長期 20.315%、譲渡した年の 1 月 1 日で判定)および居住用財産の 3,000 万円特別控除の適用要件、外務省および各在外公館の在留証明・署名証明に関する案内。2026 年 9 月時点の情報です。制度・税率は改正される場合がございますので、実際には各官公庁の最新の公表内容および税理士のご判断をご確認ください。

この記事はお役に立ちましたか?ご質問はお気軽にどうぞ
気になる物件があれば、そのまま周周までお送りください。
LINEで相談する

関連記事

→ 日本で不動産を売却する際の税金は?海外在住オーナー向け完全ガイド→ 永住権がなくても日本で住宅ローンは組める?外国人の住宅ローン審査条件まとめ→ 東京の学区と住まい:文京区「3S1K」はなぜ選ばれ続けるのか

← 周周のほかの記事を見る