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空室対策——家賃を下げる前に試していただきたい五つのこと

執筆者:周周2026-09-07
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「周周さん、あの部屋、空室が二か月続いています。管理会社からは家賃を八千円下げましょうと言われているのですが、下げるべきでしょうか」——毎月のように頂戴するご相談です。

私のお答えはほぼ決まっております。まずお待ちください、と。なぜ決まらないのかを先に突き止めましょう、値下げはその後です。

理由は単純で、家賃の引き下げはほぼ不可逆だからです。一度その金額でご成約になれば、それが次回募集の基準になり、更新時もその水準が前提になります。同じ建物の他のお部屋も引きずられます。二か月の空室を埋めるために、その後何年分もの賃料を差し出すことになりかねません。これに対し、これから申し上げる方法の多くは一度きりの負担で済みます。

ですので結論から申し上げます。値下げは最初の一手ではなく、最後の一手です。以下、私が実際に管理会社へお願いしている五つの手順を、おすすめの順番でご紹介いたします。

一、まず切り分ける——「内見が入らない」のか「内見後に決まらない」のか

ここが分水嶺なのですが、多くのオーナー様がこの確認を飛ばして、いきなり価格の話に入ってしまわれます。

管理会社に確認していただきたい数字は二つです。この期間の内見件数と、内見後のご意見です。会社によっては反響件数(お問い合わせ数)と内見件数を分けてお出しになります。

内見そのものがほとんど入っていないのであれば、お部屋の問題ではなく、露出か条件の問題である可能性が高いと考えられます。写真が古い、主要なポータルサイトに掲載されていない、あるいは賃料が検索区分のわずかに上側に設定されている(たとえば 10 万 2 千円ですと「10 万円以内」の絞り込みから漏れます)。この状態で五千円下げても、そもそも見られていないのですから効果は薄うございます。

逆に、内見はそれなりに入っているのにご成約に至らないのであれば、お部屋そのものか条件が近隣の競合に負けている、ということになります。伺うべきは「最終的にどちらのお部屋をお選びになったか、その物件と何が違ったか」です。管理会社は答えをご存じのことが多いのですが、こちらから伺わないとお話しになりません。

海外にお住まいのオーナー様が最も不利になるのが、まさにこの部分です。現地をご覧になれず、こちらから伺わなければ、「値下げしますか」という選択肢だけが届いてしまいます。

二、譲るなら初期費用で。月々の家賃では譲らない

どうしても条件を緩める必要がある場合、動かすべきはご入居時に一度お支払いになる部分であって、毎月の賃料ではございません。よく使う三つの手です。

フリーレント——一か月分の賃料を無料にいたします。ご入居者から見れば一か月分まるごと浮きますので訴求力が非常に高く、オーナー様にとっては一度きりの負担で、賃料の表示額は下がりません。毎月五千円下げて三年ご契約いただくよりも、一か月のフリーレントで決めていただくほうが、多くの場合有利でございます。

敷金・礼金ゼロ——ご入居のハードルを下げます。ただし一点ご注意を。敷金をゼロにいたしますと、ご退去時の原状回復費用を手元に確保できず、ご自身でご負担になるか別途ご請求することになります。礼金は譲っても、敷金は一か月分ほど残されることをおすすめしております。

広告料(AD)の上乗せ——客付けをしてくださる仲介会社へのお支払いです。一か月分上乗せするだけで、ご紹介の優先順位が目に見えて上がります。「なぜさらに払うのか」と思われがちですが、東京の賃貸市場において AD は案内順を実質的に動かすレバーでございます。

三、条件を少し緩める——ご需要はすぐ外側にございます

東京には「お部屋が見つからない」方が大勢いらっしゃいます。お客様の「決まらない」と同時に存在しているのです。間に挟まっているのは、多くの場合、価格ではなく条件です。

最も効果が大きいのはペット可でございます。お支払い能力があり、長くお住まいになる層でありながら、選択肢が極端に少ない。代償として原状回復のリスクが上がりますので、敷金を一〜二か月分積み増していただき、リスクを買い戻す形にいたします。

ほかにも、外国籍の方のご入居可、法人契約可(企業の社宅利用はお支払いが安定しております)、二人入居可、在宅勤務・SOHO 利用可。一つ緩めるごとに、これまで自動的に除外されていた層がまるごと視界に入ってまいります。

付け加えますと、外国籍の方のご入居を今なお認めないオーナー様は少なくございません。裏を返せば、認められるお客様にとっては機会でございます。

四、少額で第一印象を変える

この項は十万円前後、あるいはそれ以下で実施できるものばかりです。費用対効果は値下げよりも良好なことが多うございます。

最優先はインターネット無料です。ポータルサイトの絞り込み条件になっておりますので、対応するだけで多くの方のリストに入ります。ご入居者にとっては毎月四、五千円の節約に相当し、賃料を三千円下げるより体感が強うございます。導入費用は建物条件により幅がございますが、私が最初にご提案することの多い一手です。

次いで温水洗浄便座、室内洗濯機置場、玄関と洗面まわりの照明を明るいものへ、そしてアクセントクロス一面。日本の内見は滞在時間が短く、玄関を開けた最初の三秒でほぼ決まってしまいます。

最後に、写真の撮り直し。費用はゼロですが、効果は最も大きいことがございます。十年前に撮影された、暗く、物が写り込み、広角で歪んだ写真がそのまま残っているお部屋は珍しくありません。晴れた日中に、全灯した状態で撮り直していただくだけで、反響数がはっきり変わることがございます。

五、最後に確認——そもそも本当に「出ている」か

最後に回しましたが、実際に問題が見つかることが最も多いのはここでございます。

確認事項は単純です。レインズおよび業者間の物件流通システムに登録されているか。主要なポータルサイトに掲載されているか。写真は何枚か。紹介文はどう書かれているか。所在地と広さでご自身で検索してみていただければ十分で、見つからなければ問題がございます。

三か月空いていて、内見が数件、写真が三枚で暗い——それは市場の問題ではなく、ご依頼先が動いていないということです。この場合に見直すべきは賃料ではなく管理会社でございます。選び方と費用については賃貸管理会社の選び方と費用にまとめております。

では、いつ下げるのが正しいのか

下げてはいけないと申し上げているのではございません。右の五項目をすべて実施し、内見も一定数入り、ご意見が揃って「悪くはないが隣より高い」と示しているのであれば、それは相場が動いたという市場からのお知らせです。そのときの調整は正しい判断でございます。

もう一つは、賃料が検索区分の境目に置かれている場合です。10 万 2 千円を 9 万 9 千円へ。帳簿上は三千円の減額にすぎませんが、「予算 10 万円以内」で探していらっしゃる層の目に一斉に触れることになります。区分をまたぐ微調整は、同じ区分の中でさらに五千円下げるよりも効くことが多うございます。

前提の確認——全国の空き家率と、東京のお部屋は別の話です

ご不安の多くは報道から生まれております。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2024 年公表)によれば、全国の空き家は 900 万戸、空き家率は 13.8% でいずれも過去最高でした。うち賃貸用の空き家は約 443 万戸とされております。確かに大きな数字ですが、これは全国平均であり、地方の老朽化した賃貸住宅に大きく押し上げられたものです。

同時期の東京はまったく別の絵柄でございます。アットホーム株式会社「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向(2026 年 6 月)」によれば、東京 23 区のマンション・シングル向きの平均募集家賃は 25 か月連続で 2015 年 1 月以降の最高値を更新し、首都圏各エリアの全面積帯が前年同月を上回っております。

つまり、東京にあり、立地も標準的なお部屋が決まらないのであれば、それは「市況が悪い」のではなく、そのお部屋の条件・露出・ご依頼先に理由がある可能性が高い。そしてそのいずれも、変えられるものでございます。

あわせて——空室はもともと費用です。先に織り込んでおく

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の調査では、平均居住期間はおおむね単身で 3 年 3 か月、ファミリーで 5 年 1 か月とされております。三年から五年に一度は、ご退去・募集・原状回復が発生するということです。これは事故ではなく、通常運転でございます。

したがって収益を計算なさる際は、空室期間と募集費用をあらかじめ差し引いてご覧いただく必要がございます。表面利回りだけをご覧にならないようお願いしている理由もここにあり、詳細は表面利回りと実質利回りの違いにまとめております。

計算し直した結果、そのお部屋が長期的に貸しにくく、立地にも将来性が乏しいということであれば、ご検討いただくべきは入れ替えでございます。その場合は海外オーナーのための売却の流れ・費用・期間をご参照ください。

周周からのご提案

海外にお住まいの最大の不利は、管理会社がお出しになった選択肢しか届かないことでございます。「値下げのご提案」が届きましたら、まず三点だけお尋ねください。この期間の内見件数は。ご検討の方が最終的にお選びになったのはどの物件で、何が違ったか。現在どのポータルに、写真は何枚で掲載されているか。この三点だけで、多くのことがひとりでに見えてまいります。

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(2024 年 4 月速報・9 月確報公表。全国の空き家 900 万戸、空き家率 13.8%)、同調査に基づく賃貸用の空き家約 443 万戸(全国賃貸住宅新聞報道)、アットホーム株式会社「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向(2026 年 6 月)」、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」平均居住期間調査。数値は調査年度により変動いたしますので、実際には各機関の最新公表値をご確認ください。個別物件の募集戦略と費用は、建物条件および所在エリアにより判断が異なります。2026 年 9 月時点の情報です

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